電気なデンキ。日本初エレキテルの復元を遂げたイノベーター・平賀源内 その5

電気なデンキ。日本初エレキテルの復元を遂げたイノベーター・平賀源内 その5

好奇心の赴くままに、自分のやりたいこと、興味のあることに熱中してきた源内。今でいう”フリーランサー”として活躍を続けます。


二度の脱藩、フリーの事業者へ

江戸時代は半ば。当時の日本は金・銀・銅をはじめとした原料や資源の輸出国となっていました。しかし、人口が急激にふえたこと、資源が枯渇してきたことにとり、新規事業の創出や新たな施策が必要に。そこで、普及と発展を遂げてきた蘭学をもとに、輸入品の国産化を進めようとします。
そのとき、源内は本草学者として名をあげ、高松藩の薬坊主格となったものの、国内を自由に行き来するのは藩の許可が必要であることに不便を感じ、なんと脱藩。高松藩は源内を「仕官御構(おかまい)」という処され、幕府や他の藩への仕官を禁じられてしまうのです。
所属する藩がない=今でいうフリーランス(のような状態)。しかし源内はフリーという特権を生かし、さまざまな事業を立ち上げていきます。

短期間で次々と新規事業を興す

脱藩後の源内は次々と新規事業を興します。成功したか否かはなんとも言い難いものの、事業を興すということは、多大な労力と知識、そして何よりもアイデアが必要です。今の時代、彼のようにおよそ2年ごとのペースでここまで立ち上げている起業家はいるでしょうか…?

1762年 源内35歳
東都薬品会主催 1300種の物産を集めた博覧会

1764年 源内37歳
防災繊維で火浣布(燃えない布)を作り、幕府に献上。ただし技術が追いつかず、ビジネスとしてはうまくいきませんでした。この際、「火浣布略説」を執筆。

1767年 源内39歳
資金調達を行い秩父の金山開発に着手して金の産出による一獲千金を狙うも幕府から中止令が発令される。

1770年 源内43歳
度目の長崎行のおり数頭のヒツジを買い入れ、これを郷里志度の知人へ送り飼育を依頼。志度で羊毛をつむぎ、「国倫(くにとも)織」と名付けた。

1771年 源内44歳
長崎遊学のときに目にした天草陶石の素晴らしさを記すべく、西国郡代に建白書「陶器工夫書」を提出。

1773年 源内46歳
中津川鉄山で鉄の精錬事業を開始するものの、失敗。鉱山は閉山。一説によれば現在の金額に換算して20億円もの赤字を出したのだとか。

1774年 源内47歳
借財返済のため、小間物販売や戯作、商品の宣伝文などの創作に取り組む。炭焼事業、荒川通船工事の指導も。

1775年 源内48歳
長崎から持ち帰った摩擦起電器「エレキセエリテイト」の復元に着手。革を模した紙金唐革紙(きんからかわかみ)を開発、根付けなどの細工物を含む商売を開始。

1776年 源内49歳
長崎へ訪れた際に持ち帰った大量の伽羅の木。伽羅の木というのは香木でいい香りが漂うため、この香木で作られた櫛は高級とされてきました。源内はそれをもう一工夫します。棟の部分を銀で飾ってさらに高級な櫛を開発、宣伝しました。宣伝にあたり起用したのは吉原の遊女。源内櫛は大ヒットを記録しました。

1777年 源内50歳
「エレキセエリテイト」の復元に成功し「エレキテル」と名付けて公開。
同時期に『長枕褥合戦(ながまくらしとねかっせん)』を発表。

ちょっとやそっとじゃへこたれない

事業が失敗して多額の借金を抱えることになっても、常に挑戦を続けてきた平賀源内。たとえ利益にならなくても、自分の好奇心を満たしてくれる事業に注力し、自分らしく生き抜いてきたイノベーターだと言えるのではないでしょうか。

この記事のWriter

関連するキーワード


電気 伝記

関連する投稿


電気の正体とは?言葉の意味や電気エネルギーも分かりやすく解説!

電気の正体とは?言葉の意味や電気エネルギーも分かりやすく解説!

私たちの生活において必要不可欠な電気。身近な存在でありながら、その特徴については詳しく知らない方も多いのでは。今回は電気とは何かというテーマで基本的な内容を解説していきます。


交流回路の位相や力率とは?進みや遅れについても分かりやすく解説!

交流回路の位相や力率とは?進みや遅れについても分かりやすく解説!

直流回路にない概念である位相と力率。交流回路を学ぶ上で避けて通れない概念でありながら、なかなか腑に落ちない方も多いハズ。そこで今回は交流回路における位相と力率について、言葉の意味や計算方法、改善する方法などについて網羅的に解説していきます。


次世代電池として注目されている全固体電池って何?

次世代電池として注目されている全固体電池って何?

スマートフォンのバッテリなどに使われているリチウムイオン電池は、電気自動車などにも使われ始めています。しかし、使い方を間違えると発火や爆発などの危険性があり、注意が必要です。 一方で、大容量電池として活用が期待されている「全固体電池」の研究が進んでいることをご存知でしょうか?2035年には、現在もっとも高性能とされているリチウムイオン電池にとって代わると言われているのです。


電気のことをもっと知りたい!「静電気って何ボルト?」

電気のことをもっと知りたい!「静電気って何ボルト?」

静電気は、物体の表面に蓄積した電荷の不均等な分布によって引き起こされます。物体はもともと、プラスとマイナスの電荷を持つ原子から構成されており、通常は中性です。しかし、外部要因によって物体が摩擦や接触をすると、電子が移動して電荷のバランスが崩れ、物体の表面にプラスまたはマイナスの電荷が偏って蓄積されることがるのです。


【関電工×Gakken】よくわかるシリーズ「電気のひみつ」を無料公開!

【関電工×Gakken】よくわかるシリーズ「電気のひみつ」を無料公開!

「学研まんがでよくわかるシリーズ」は小学生向けにさまざまなテーマをわかりやすく紹介しており、日本PTA全国協議会の推薦の図書です。非売品ですが全国の小学校や公立図書館に無料配布されており、電子書籍でも無料で読むことができます。 今回、関電工さんとGakkenさんが共同で製作した、「電気」をテーマにわかりやすく解説しているマンガ「電気のひみつ」を紹介いたします。私たちの生活に身近なテーマを取り上げながら、電気の原理や発電の仕組みなどを解説されており、小学生はもちろんのこと大人にもおすすめの一冊です。


最新の投稿


【電気の世界はおもしろい!】電気工事士の資格を取るとこんなことができる

【電気の世界はおもしろい!】電気工事士の資格を取るとこんなことができる

「電気工事士の資格を取ると、どんなことができるんだろう?」 私たちの生活には、家電が多く使われています。実際にどこからどこまでを対応できるのか、写真つきでわかりやすくご紹介します。


コーヒー好き必見!コーヒーメーカーの構造と仕組みを解説します。

コーヒー好き必見!コーヒーメーカーの構造と仕組みを解説します。

コーヒー豆を入れれば美味しいコーヒーを作ってくれるコーヒーメーカー。今回はコーヒーメーカーがどのようにコーヒーを作るのか、特徴的な部品に注目しながら解説します。あまり専門的なことを知らなくても理解できる内容ですので、ぜひ最後まで読んでみて下さい。


電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「地層処分ってなあに?避けては通れない大事な問題」

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「地層処分ってなあに?避けては通れない大事な問題」

原子力発電をした後に発生する燃料の燃えカスを高レベル放射性廃棄物と言いますが、放射線を発することから、人が生活する場所から離れた場所へ保管することが決められています。地下深くに埋めることを決めており、そのことを地層処分といいます。発電後の廃棄物処理は電気を使う私たちにとっても重要な問題なのです。


現場で役立つ!私の自作道具たちをご紹介します

現場で役立つ!私の自作道具たちをご紹介します

アイデアと工夫で作業の効率化、時間短縮をしてみませんか?私が工事で使用している、手製道具の一部をご紹介致します。


電気工事士マンガ「転電虫」 第三十三回「技能実習生のお名前」

電気工事士マンガ「転電虫」 第三十三回「技能実習生のお名前」

最近では女性躍進、海外の実習生さんなど、多様な方が電気業界で大活躍しています!


人気記事ランキング


>>総合人気ランキング