「実務経験を積むための保安法人」を立ち上げるベンチャー企業登場

「実務経験を積むための保安法人」を立ち上げるベンチャー企業登場

電気の情報を発信している「電気通信ピカリ⚡」は東大阪にある(株)ミズノワが運営しています。その代表水島さんが新しく「実務経験を積むための電気保安法人」を立ち上げるため、クラウドファンディングを実施しています。https://readyfor.jp/projects/6600Vしかも実は2回目。一体どういう会社なのか、そしてどんな経緯があったのか、インタビューを決行させて頂きました


電気設備業界をもっと変えたい。2度目のクラウドファンディングへ挑戦

(株)ミズノワを立ち上げたのは、『電気主任技術者』という職業に魅せられた水島さん。
電気保安法人の営業職を11年間勤めていました。

会社を辞めてまで、なぜ立ち上げたのかというと

「電気主任技術者になるための資格「電験」を持つ方が、その資格を活用し、いつまでも働きやすい世の中を作るため」

だと言います。

電気保安業界は、若手技術者の参入が難しく、圧倒的に数が不足しています。
技術者全体の人口も高齢化により減る一方。その問題を解決するために。
その一歩が前回のクラウドファンディングだったそうです。その内容は?

「電気技術者の人口を増やすには、業界の良いところも悪いところも全てをオープンに語り合える空間が必要だと感じ、コミュニティスペースを作ろうと思いました。

だから『電気主任技術者や電験資格者が集うフリースペースをつくりたい! 』というタイトルでクラウドファンディングを実施しました。たくさんの方々のご協力のおかげで120万円ものご支援が集まり、大阪府内に電気技術者に特化したフリースペースを開業することができました」


それが東大阪にある「Cafe自家用電気」通称『カフェジカ』の誕生となりました。

電気の技術者が全国から集まるフリースペース カフェジカ

一方、技術者の人口を増やすため、(株)ミズノワは運営し技術者の横のつながりを広げつつ、職業紹介事業の認可を受け『電気技術者に特化した「職業紹介」もはじめました。

「選任施設の電気主任技術者や、ビル管理会社での選任施設などを主に紹介させていただき、電験取得者が実務経験を積める環境を増やそうと考えていました。 しかし、この電気保安業界の人手不足問題はそう簡単に解決できるものではないことも改めて分かりました。電気主任技術者になるために必要な電験という資格は合格率が10%。合格しても実務経験を積まなくては行けません。退職する際の理由や、企業の社風によっては、実務経歴書への捺印を拒否する企業も珍しい話ではありません」

そんな中、一つの出来事がありました…

「先日も、電気保安業界に強く憧れをもち、電験を持つ31歳の方を電気保安企業へ紹介いたしましたが、『実務経験の無い方は少数しか雇用できない』として採用には至らず、業界の人口を増やしていきたい思いが打ち砕かれた瞬間でもありました」

中途の場合は、引き受けできる保安法人が少なく、更に給与も高くはないのが現状…

「電気保安業界への就職がとても難しいためこの人手不足問題が起きてしまっているのです」

電気主任技術者を増やすために動き続けた日々…その現実

それはもう1年前のこと。
それからカフェジカではこれまでどんなことが起こってきたのでしょうか?

「ここでは月に1,2回、皆さんのそれぞれの幅広い電気のスキルや情報を共有しながら、資格の取得や実務知識をシェアする電気技術者に特化したイベントを開催しています」

その濃密なイベントを行っている場所がカフェジカ。
イベントは毎回いろんなことが起き、質の高い学びが起きていました。
冗談ではなく、本当に北は北海道、南は沖縄から、来られていました。

頂き物の受電設備も本当に多く、現在はPASも見事に吊り下がり、試験器もあり、技術者たちの実務練習の場にもなっています。
しかもその進化はまだゴールにたどり着いていないようです。

「『電気主任技術者』『電験2種を目指す方々』など、周りにそんな人はいないものですから、ここでの空間が本当にかけがえの無いものになっていることが良く分かります。クラウドファンディング、そしてフリースペースのおかげで、たくさんの電気技術関係者と繋がることができ、当初考えもしなかった電気を軸にした職種の方々、多くの繋がり。電気保安の営業1本で生きてきた私にとっては目からウロコの毎日でした」

でもそんな中で電気保安業界の現状の課題を改めて再確認したそうです。

ミズノワが運営する保安法人の仕組みとは!~ 知識豊富な技術者と、実務経験の足りない技術者とのバディー制度~

そこで、今回皆様からご支援いただき、株式会社ミズノワとは別に、新たに保安法人を立ち上げることを決めたと言います。

でも保安法人を作っても実務の経験をどうやって積む環境ができるのでしょうか?
他の保安法人と一緒じゃないのでしょうか?

「保安法人では実務経験を積むことが可能です。しかし現状保安法人は、会社側として考えると、実務経験を積む技術者を採用することは、保安業務担当者の『サポート要員』として経験を積ませることになるため、ダブルコストになってしまい実務経験を積ませることが難しい現状です」

じゃあダブルコストの問題はどうするんでしょう?

「今回立ち上げる保安法人では、一定数顧客との契約件数が得られれば、比較的に安定します。私たちは『実務経験を積ませること』に注力した保安法人として活動をしていこうと考えています。 また、実務を積んだ技術社員については、弊社で引き続き外部委託を受け持つ電気管理技術者として残るもよいですし、他の外部委託団体へ転職されるもよしと考えています」

(株)ミズノワでは職業紹介会社であることは継続中ですので、実務経験取得後に即戦力の技術者をご紹介する流れを作っているんですね。
加えて…

「保安法人を立ち上げることで、時には、同業の保安法人の受託先を切り替えさせて頂くこともあるかもしれません。でも、ライバル会社としてではなく、社会的に必要となる技術者の育成のため、少しばかり、多くは望みませんので、お客様のご希望によって時には保安管理契約の切り替えをお許し頂きたいのです。 しっかり必要な法律を身に付け、経験豊かな電気技術者を増やしていきたいと考えています」

多くは望まず、必要な分だけ… 
そして実務経験を積んだ技術者が、希望によっては外に飛び出していく。
今後も他の保安法人さんとの協力関係を作っていく動きをしていくそうです。

最後に、水島さんが電気業界に伝えたい事

今回のクラウドファンディングを通じて下記のことも目指していきたいと考えているようです。

どんなことを考えていますか?

「『お客様の電気設備を守る電気保安業界』という素敵な仕事の良さを知って欲しい」
「電気主任技術者を増やし、誰も点検をしてもらえない施設を減らしたい」
「電気保安業界に、自由な働き方ができる・高齢者でも安心して長く働ける環境を整え、生涯現役で働ける技術者を増やしたい」
「若い世代の教育にも力を入れることで、今までの枠を超えた価値を提供できる電気技術者を増やしていきたい」
「人に喜んでいただける技術者を増やしたい」

「そしてもちろん保安法人と並行でカフェジカの発展も進めていき、電気業界を軸にした方々が、幅広い分野とのコネクションを作り多くの情報をもつことで、さまざまなことでお互い協力できるような素敵な業界にしていきたい」

最後にメッセージをお願いしました。

「前回のクラウドファンディングを通じて本当に多くの方と繋がりができ、カフェジカを通じて来店者同士での出会い、来店者と企業様との出会いがたくさん生まれ始めました。 電気業界の横断的な立ち位置として、こういった空間を提供し続けてきたミズノワだからこそ、保安法人という立場で多くのお客様と繋がりが出来れば、もっと多くの出会いを生み出すことができ、業界を盛り上げることが出来るものと考えています。

まだ大阪を中心とした近畿圏での活動になるかと思いますが、全国でカフェジカを作って欲しいという声も聞きます。すぐには難しいかもしれませんが、ご協力者様の数が増えれば、近い将来実現も出来るかもしれません。 技術者が誇りを持って、電気を軸にした仲間と共に仕事をし、お客様から喜ばれる技術者を作りたい。楽しくやりがいを持って生活をすることで、若い世代から尊敬が生まれ、結果として技術者人口が増えるきっかけとなればと考えています。 至らない点も多くあるかと思いますが、精一杯の活動をしていきたく思いますので、どうぞご支援のほど宜しくお願い致します」

以上となりましたが、2回目のクラウドファンディング。想いをしっかりと形に変えていく水島さんを、今後とも注目していっていただければと思います。

株式会社ミズノワ

電気技術者が集うフリースペースCafe カフェジカ東大阪を運営
電気業界に特化した企業と就職希望者とを結び
ミスマッチの無い就職をサポートしている。
https://mizunowa.jp/
電気業界を明るく照らす情報も「電気通信ピカリ⚡」にて発信中
https://mizunowa.jp/pikali/

若手ホープが語る、電気業界の未来とは?

関西電気保安協会の若手ホープが語る、「25歳の僕が見つめる電気業界の未来」

https://www.watt-mag.jp/articles/129

「電気業界で働く人は40代や50代が多そう…」なんとなくですが、そんなイメージを持っている人も少なくないのでは。しかし、そんなことはありません! 毎年、多くの若手がこの世界の扉を叩き、切磋琢磨しながら働いているからです。その一人が関西電気保安協会の“若手ホープ”里本樹さん(25歳)。18歳で入社し、今年で8年目。今回は里本さんに、電気業界の現在、そして未来について伺いました。実務経験を積む中で気付いた、働く上で大切なこととは?

仲間たちと働ける場所として、保安法人を設立した「日日是好日」さんにインタビュー!

「保安法人を独力で立ち上げた日日是好日さん」 ~ 実務経験証明の壁 & 仲間たちと働ける場所としての保安法人 ~

https://www.watt-mag.jp/articles/74

東京で保安法人を独力で立ち上げた驚くべき人がいる…そんな噂を聞きました。それは最近、Twitterでそのリアルな葛藤を描写し話題を呼ぶ、日日是好日(ハンドルネーム)さん。Twitterを見てみると、とても熱い方だという事が分かります。どうも電気主任技術者のお仕事をしながら今年、保安法人を立ち上げたようです。しかも一人で… どんな風になぜ立ち上げたのか、気になること実情をきいてみました

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