私立大学大学院(博士前期課程)卒業後、大手メーカーで電気部品の開発業務に従事。現在はとある施設にて電気主任技術者として高圧電気保安業務を担当している。また、フリーライターとして「電気主任技術者が運営する就活転職応援サイト」を運営中。
電気機器のしくみ
漏電ブレーカーが落ちる仕組みとは?ブレーカーの役割と仕組み、落ちた時の復旧方法を解説!
エアコンと電子レンジ、ドライヤーを同時に使用して、ブレーカーが落ちた経験はありませんか。この記事では、漏電ブレーカーが落ちる仕組みについて詳しく解説します。
目次
ブレーカーは3つの種類がある
各家庭には、焼損(過電流)、漏電、契約容量を超える電気の使用を防ぐためにブレーカーが設置されています。一般家庭で使用されているブレーカーは次のような構造になっており、それぞれ役割が異なります(地域によって電力の供給方式は異なりますが、ここでは関東のケースについて解説します)。

安全ブレーカー(配線用遮断機)
一度に多くの電化製品を使用すると過剰な電流(過電流)が発生することがあります。たとえば、ご家庭で定格電流20Aの安全ブレーカーを使用している場合、それを超える電流が流れるとブレーカーが落ちます。これにより、電線や電化製品が過剰な熱によって損傷するのを防ぎ、安全を確保しています。
家電製品の使用電流の一例(ただし、製品や性能、使用状況により異なります)

上記の内容を元に、450L冷蔵庫とIHジャー炊飯器を同時に使った場合を考えてみましょう。
450L冷蔵庫(2.5A)+IHジャー炊飯器(13A)=15.5 A
この2つを同時に利用しても20Aに達していないため、安全ブレーカーは落ちません。しかし、450L冷蔵庫とIHジャー炊飯器、掃除機を同時に使用したらどうでしょう。
450L冷蔵庫(2.5A)+IHジャー炊飯器(13A)+掃除機(10A)=25.5 A
この3つを同時に使用すると20Aを超え、安全ブレーカーが落ちます。この場合、いずれかの電化製品の使用を中止するか、別の安全ブレーカーが接続されているコンセントを使用しなくてはなりません。
また、故障した電化製品を使用すると過電流が発生することがあり、安全ブレーカーが落ちることがあります。過電流は焼損を引き起こす可能性があるため非常に危険です!
安全ブレーカーが落ちる原理
① 「熱による作動」
電流が流れると「ジュールの法則」に従い、電線に熱が発生します。この熱を感知すると、バイメタル(鉄などの異なる金属を組み合わせた合金で、熱を与えると形が変形する特徴を持つ)が変形し、ブレーカーが作動します
② 「磁気による作動」
ブレーカー内部には銅線を巻いたコイルが内蔵されています。電流がこのコイルに流れることで磁石が発生し、その磁力によってブレーカーが作動します。
漏電ブレーカー(漏電遮断器)
漏電した際に即座に電流を遮断するのが漏電ブレーカーです。漏電とは本来流れる経路以外に電気が漏れてしまう現象を指します。
たとえば濡れたコンセントや故障した洗濯機などに手で触ると、電気が漏れ、身体を通じて地面へ流れ感電する危険があります。しかし漏電ブレーカーが設置されていれば即座に漏電を検知して電気を遮断するため、結果的に身の安全を守ることができます。法律では「60Vを超える電路には漏電ブレーカーを設置すること」が義務付けられています。万が一、漏電ブレーカーが設置されていない電路を見つけた際には、速やかに設置しましょう。
漏電ブレーカーが落ちる原理

漏電ブレーカーにはZCT(零相変流器)と呼ばれる輪状の電流検出装置が内蔵されており、そこで行きの電流と帰りの電流の差を監視しています。 通常、漏電がなければ行きの電流と帰りの電流に差異が生じることはありませんが、漏電すればその分帰りの電流の値が小さくなります。電流の差がわかった時点で即座に漏電ブレーカーが落ち、電気の供給を遮断します。
アンペアブレーカー
※スマートメーターで契約アンペアを設定する場合、アンペアブレーカーは取り付けられていません。
アンペアブレーカーは電力会社と契約した電流値(契約アンペア)を超えた際に落ちるようになっていますが、安全ブレーカーや漏電ブレーカーのように漏電や過電流などの危険を直接防ぐものではありません。アンペアブレーカーが頻繁に落ちるようであれば、契約アンペアの変更を検討するか、同時に使用する電気機器数を減らすなどして、使用電流を制限するようにしましょう。
漏電ブレーカーが落ちた時の復旧方法
漏電が発生すると、漏電箇所に触れたことによる感電や発熱による火災のリスクが生じます。こうした危険を防止するために漏電ブレーカーが作動して電気の供給を遮断してくれるのです。ここでは漏電ブレーカーが落ちた際の復旧手順をわかりやすく解説します。
① 全てのブレーカーのつまみを下げてオフにする。
② 漏電ブレーカーのスイッチとアンペアブレーカーのスイッチを「入」にする。

③ 安全ブレーカーのつまみを一つずつ「入」にする。このとき、いずれかのつまみをあげた際に漏電ブレーカーが落ちたら、その回路が漏電している可能性があるため、漏電している回路の安全ブレーカーは下げておきます。
メモ:地震発生などの災害時は、感電や通電火災による被害を防止するためにすべてのブレーカーを「オフ」にすることが推奨されています。
普段の生活の中でブレーカーを落とさないようにするには
「急に電化製品が使えなくなった!」「いきなり部屋が真っ暗になってびっくりした」。そんな事態に驚かないよう、事前にブレーカーが落ちない対策をしておくことが大切です。
①電気の使用量や使用時間、使用している電化製品を見直してみよう!
電流が大きい機器を一緒に使用するとすぐに許容量を超えてしまい、ブレーカーが落ちてしまいます。使用電流の表を参考に、バランスを考慮して電化製品を使用してみましょう。
② 契約しているアンペア数を見直してみよう
頻繁にブレーカーが落ちてしまうようであれば、契約しているアンペア数の見直しも検討してみましょう。近年は気温の上昇により、30度を超える日が増えています。それに伴い、冷房を使用する時間や使用量も増加し、たくさんの電力を使用しています。環境やライフスタイルに合わせて適切なアンペア数へと見直すと良いでしょう。
③ ブレーカーが故障していないか確認してみよう
漏電もしておらず、なおかつ、電化製品の使用もおさえているのにブレーカーが落ちる場合は、ブレーカー自体が故障している可能性があるので確認してみましょう。ブレーカーの交換推奨時期は通常10〜15年程度とされています。15年以上使用していると、経年劣化により遮断精度や感度が劣化し、火災や感電のリスクが高まりますので、安全を守るためにも交換を推奨します。
まとめ〜安全・安心な生活をおくるために電気とうまく付き合っていこう
ブレーカーは電気を安全に使うための重要な装置です。生活に欠かせない電気。快適な生活をおくるために、電気を安全かつ適切に使用するよう心がけましょう。
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