電気業界の仕事とは?
電気を届ける仕事・ラインマン(送電線作業員)とは?仕事の魅力や給料などを解説

ラインマン(送電線作業員)は、電力を安定して届けるために欠かせない、社会インフラの守り手です。
ラインマンは、送電線の鉄塔や電線への乗り出しなどの高所で作業を行い、送電線の建設や保守、点検を行います。災害時や停電時には、迅速な復旧を支えるプロフェッショナルであり、技術力と安全対策が求められる責任感のある職業です。
電力供給を支える重要な役割を果たしている裏側には、ラインマンたちの献身的な働きがあります。全ての作業においてチームワークをとても大切にしています。
今回の記事では、社会のインフラを支えるラインマンについて、詳しく解説していきます。
目次
ラインマンとは「電気を届ける」お仕事

ラインマン(送電線作業員)は、送電線や鉄塔の建設、保守、点検を行い、電力の安定供給を支える重要な役割を担います。
発電所で作られた電気が、各家庭や建物に安定して届くのは、ラインマンが日頃から送電線や鉄塔の建設、保守、点検を行っているからです。
ラインマンは高所作業が多く、電線の張り替えや修理を行う際には高度な技術と安全対策が求められます。地震や停電などの緊急時にも迅速に対応し、社会インフラを守る使命感が強い職業です。
作業は屋外で行われるため、天候に左右されることもありますが、チームワークを重視しながら達成感を得られる仕事です。
ラインマンの魅力!やりがい!

現代社会では、電気のない生活は考えられません。電気を届けるラインマンは、私達の生活を支える「縁の下の力持ち」的な存在です。
私達の生活を支える「ラインマン」という存在
ラインマンの作業する場所は高所が多く、鉄塔は地上数十メートルから、200メートルの高さがあります。
普通の人なら、そんな高所で作業をするとなると、足が震えて動けなくなるのではないでしょうか?しかし、ラインマンはそんな高所でも重たい器具を背負い、私達の生活を支えるために電気を届けるための作業をしてくれます。
また、日本は災害の多い国です。記憶に新しいところだと、2024年1月1日に、能登半島地震が発生しました。ラインマンは能登半島地震の際も、被災地へと応援に向かって復旧に向けて尽力しています。
ラインマンには、私達や日本の生活を守るという使命感を持った人がいて、それが自分自身のやりがいに繋がっている人も存在します。
ラインマンのやりがい
ラインマンの人にやりがいを聞くと「鉄塔に登り、ラインマンでしか見られない景色が見れる。」という回答が返ってきます。
あるラインマンは、「2024年3月に開業した北陸新幹線近くの鉄塔に登る仕事で、鉄塔の上から通過する新幹線を見たときは、とても感動した。」と言っていました。
場所によっては、雲海を眺めながら作業をすることもあります。一般の人には見えない景色を眺めることは、ラインマンにとってのやりがいの一つと言えるでしょう。

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ラインマンになるには?資格は必要?

ラインマンになるためには、特定の資格というものは存在しません。高所で特別高圧を扱う仕事となるので、チームワークや相手を思う人柄が必要になります。
ラインマンになるには特定の資格は存在しない
ラインマン(送電線作業員)になるために、特定の資格や免許は必須ではありません。しかし高所での作業が中心となるため、安全対策に関する訓練や教育を受ける必要があります。
ラインマンは、入社後に必要な技術や知識を学ぶ環境が整っているため、異業種からの転職も可能です。
また、作業の安全性を確保するために「高所作業車運転技能講習」や「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」などの資格取得が推奨されます。
ラインマンとして経験を積むことで、さらに専門的な資格を取得し、キャリアアップを目指すこともできます。
ラインマンに求められる「チームワーク」と「人柄」
ラインマンの仕事は、チームワークが大事です。相手のことを考え、互いに助け合い、士気を高め合います。そして、個々の力も切磋琢磨していくことで、パフォーマンスの向上に繋がります。
高所で過酷な場所での作業だからこそ、目配りや気配りのできる、他人を思いやれる人柄が大切です。また会社としては、何でも相談しやすい環境を作り、個々の可能性を伸ばす人材育成が求められます。
【給料】ラインマンの月収や平均年収は?

「job tag(厚生労働省)」では、送電線工事(送電線架線・敷設作業員等)で働く人の年収は、令和6年で547.6万円と紹介されています。
出典:送電線工事 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
経験や技能によって収入は変動し、ベテランラインマンや管理職に昇進することでさらに高収入を目指すことが可能です。
ベテランになってくると高い技能水準を示す基準として、作業班長の資格認定制度が設けられています。また技能職としての特性上、若い世代でも腕次第で早期に収入を上げることができるのも魅力的です。
【休日】ラインマンのライフワークバランス事情は?

ラインマンというと、過酷な場所での作業になるので、ライフワークバランスが取れるのか心配になる人もいると思います。
現在、働き方改革の一環で4週8休が取れるように取り組んでいるところです。
有給休暇の取得はもちろん、休日出勤があった場合は、代休が取れる環境整備が進んでいます。中には、働き方改革として次のような環境整備が進んでいるケースもあります。
①「全国一斉休日の設定」
- 毎月第2週の土日(2連休)
- スポーツの日(10月の第2月曜日)を含む土日月(3連休)
②関西電力送配電(株)独自の取り組み
- 全国一斉休日に加え、海の日(7月の第3月曜日)を含む土日月(3連休)
そのほか、電気の使用量の多い時期に「長期休暇」がとれる場合があります。
出典:働き方改革|一般社団法人 送電線建設技術研究会 関西支部
【作業】ラインマンの1日
こちらではラインマンの1日の作業、今回は「新仙台火力A線の電線張り替え工事」についてまとめてみました。
電気予報士・伊藤菜々さんのレポート動画と合わせて、ラインマンの作業や、1日の流れを見てもらえればと思います。
①朝礼

ラインマンの1日は朝礼から始まり、そこでは1日の作業内容、注意事項についての徹底確認が行われます。
ラインマンは高所で、電気を取り扱う仕事です。転落や感電、落下物注意など、事故が起こらないよう「安全最優先」を周知します。
②ミーティング

朝礼が終わると、作業に入る前のミーティングを行います。この日の作業は、「がいしの取り外し」と「送電線の張り替え」です。作業についての手順や細かい内容、作業の意味や注意事項について、徹底的に周知していきます。
ちなみに、2日前に送電線の張り替えを1本行っており、この日は2本目の張り替え作業でした。送電線を張り替えるには「慎重さ」が求められ、短時間では終わらないことが伝わります。
③作業開始
ミーティングが終わると、いよいよ作業開始です。この日は午前中に「がいしの取り外し」を行い、午後に「送電線の張り替え」を行いました。
最初に、ラインマンが鉄塔に昇って送電線へ乗り出し、現在の古い電線に取り付けられている備品や電気を絶縁するがいしを外します。

その際に、細いロープを送電線の両端に取り付け、ここに新しい電線を繋いで、古い電線に取り付けたロープを引っ張って巻き取り、張り替えます。
張り替え区間の反対側に立っている鉄塔の下から、ドラム形の巻き取り機で巻き取って行きます。

トランシーバーでやり取りをしながら、寄れたりしないように重い送電線を慎重に巻き取って行く繊細な作業です。

電気予報士・伊藤菜々さんレポート!「ラインマンって何?お仕事現場に一日密着!」
ラインマンとは送電線の工事を行う人達のことで、鉄塔の上に登って作業をしたり、電線の張り替え工事をしたりします。上空50メートルを超える場所で作業をすること…
【注意】ラインマンが作業中に気を付けなければならないこと

ラインマンは地上から数十メートルから200メートルという高所で作業します。取り扱うものは電気であるため、一歩間違えると墜落や感電といった災害に繋がります。
また、ラインマンは屋外での作業が中心のため、悪天候との戦いも強いられます。
鉄塔からの墜落
作業場所である鉄塔は、地上数十メートルから、200メートルの高さがあるため、墜落のリスクがあります。
こういった事故は、安全基本ルールを守っていれば防げたものと言われています。たとえば高所からの墜落を防ぐには、墜落制止用器具が欠かせません。
作業に慣れてきたからといって慢心せず、安全基本ルールをしっかりと守り、事故を防ぐための道具を身に着けることが大切です。
感電
電気を届けるラインマンの仕事には、感電の危険性が隣り合わせです。一歩間違えると何万ボルトという電気に触れてしまい、あっという間に命を落としてしまいます。
作業を行う前に、電路の停電を確認したり、電気が流れている電線に近づきすぎたりしないようにする行動が大切です。
悪天候との戦い
ラインマンの作業場は屋外であり、毎日が快適な気候とは限りません。よほどの豪雨や豪雪、暴風では作業が中止になることもありますが、少々の悪天候では作業を行います。
たとえば東北や北陸など、雪が降りやすい地域では、吹雪の中でも電力の安定供給のために現場に向かわなければならない場合があります。
また近年の夏は酷暑が続くため、気温が高い日は熱中症防止を図った上で作業をしているなどの対策をしています。
こういった日でも、作業開始前の朝礼やミーティングで安全対策について周知し、事故を防がなければいけません。
まとめ
ラインマンになるためには、特定の資格や免許は必須ではありませんが、高所での作業が中心なので、安全対策に関する訓練や教育を受ける必要があります。
安全基本ルールを徹底することにより、墜落や感電といった事故を防ぐことができます。時には悪天候との戦いにもなるため、チームワークや相手のことを考える人柄が大切になってきます。

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