起立性調節障害(OD)とは
立ち上がった際に、立ちくらみやめまいがした。そんな経験はありませんか?これは、立ち上がったことで一時的に血圧が下がり、脳への血流が減るためです。健康な人であれば、血管を収縮させるなどして血圧を上げるため問題はありませんが、ODの場合、その調節に時間がかかり過ぎるなど、うまく働いてくれません。
血圧は下がると、脳への血流が減るだけでなく、全身の循環にも影響を与えます。また、血流が滞ると酸素や栄養も十分に行き届かず、疲労や倦怠感など様々な症状を引き起こします。ODは、心と体が急激に成長する思春期の10~16歳におこりやすい疾患です。

■起立性調節障害(OD)の症状は
ODの症状は、めまい、ふらつき、頭痛、倦怠感、動機、腹痛、食欲不振など、症状は多岐にわたります。また、朝なかなか起きられなかったり、頭痛や腹痛で気分がすぐれなかったりと、午前中辛いことが多いというのが特徴です。しかし、午後になると改善することが多いため、「仮病」や「怠け」ではないかと誤解されることもあります。
中学生の約1割、不登校中学生の約3割がこのODであると言われていますので、決してめずらしい疾患ではありません。原因の分からない不調が続く場合は、怠けだと決めつけずに訴えに耳を傾けてあげましょう。
■起立性調節障害(OD)の診断基準

立ちくらみやめまいを起こしやすい
立っていると気持ち悪くなり、ひどいと倒れる
入浴時、あるいはいやなことを見聞きすると気持ちが悪くなる
少し動くと動悸、あるいは息切れがする
朝寝起きが悪く、午前中は調子が悪い
顔色が悪い
食欲不振
臍仙痛(腹痛)をときどき訴える
倦怠あるいは疲れやすい
頭痛
乗り物に酔いやすい
上記の症状が3つ以上当てはまる、もしくは2つでも程度が強い場合は、詳しい検査を進めます。採血や心電図などの検査で異常が見つかれば、それが上記のような不調の原因であると考えられ、別の疾患が疑われます。しかしODの場合は、基本的な検査では異常がありません。症状の原因となるような病気はないと分かることで、ODの可能性が濃厚となります。
その後、サブタイプ(どのようなタイプのODか)を決める「新起立試験」を行い、詳しいサブタイプが決まれば、ODの診断が確定し治療開始となります。
起立性調節障害(OD)の原因とは
疾患の原因は、自律神経の乱れが大きいとされています。自律神経とは、「交感神経」と「副交感神経」のことで、私たちのからだの「活動」と「休息」のバランスをとる重要なはたらきをしています。
血管を収縮させて血圧を上げたり、心拍数を上げて血流を維持したりしようとするのも、この自律神経のはたらきです。
思春期は、急激に体が成長する時期です。その急激な成長に、自律神経の発達が追い付かないことがあります。つまり自律神経が乱れた状態です。これが、思春期の子どもたちがODに罹患しやすい原因とされているのです。

起立性調節障害(OD)の治療法は
ODの治療では、まず非薬物療法がおこなわれます。十分な効果が得られない場合に、薬物療法が併用されますが、詳しい治療内容は下記のとおりです。
■疾患教育
ODの治療は、根性で治せるものではなく十分な時間を要します。時間も薬だと捉え、焦らず治療に臨むことが大切です。このことを本人だけでなく、周囲も理解しておきましょう。
■生活・環境調整

血圧維持のため十分な水分・塩分摂取
適度な運動
規則正しい生活
起き上がりや立ち上がる際は、時間をかけてゆっくりと
上記のような注意点や指導がありますが、自律神経の乱れはすぐには改善しないため、自分のペースで無理せず行いましょう。また、必要であれば学校とも情報共有を行い、連携をとることも重要です。
まとめ
新型コロナウイルスの影響により、私たちの生活は大きく変わりました。その変化により、ODに苦しむ子どもたちが増加しています。
体調不良の訴えが続く場合は、子どもの訴えに耳を傾ける。OD治療は、周囲の理解と協力を得て根気強く。まずはODへの理解を深めることから始めましょう。
プロフィール
みなみ なみ
現役看護師WEBライター。
看護師として働きながら、ライター活動を行う一児の母。皮膚科勤務経験が長く、医療関連記事だけでなく美容記事も得意。
趣味は、グルメ・旅行・英会話。こどもに邪魔をされながら、日々執筆中!
現役看護師WEBライター。
看護師として働きながら、ライター活動を行う一児の母。皮膚科勤務経験が長く、医療関連記事だけでなく美容記事も得意。
趣味は、グルメ・旅行・英会話。こどもに邪魔をされながら、日々執筆中!