
「よくわからないけどダメそう」な日本の政治について、気鋭の若き社会学者と考える。生まれたときから当たり前のようにあるけれど、正体はよくわからない「民主主義」や「自由」の価値と意味。
『ぶっちゃけ、誰が国を動かしているのか教えてください』
西田亮介 著
日本実業出版社
「政治や行政についてよく知りもしないのに、なぜ選挙を通じて選択しないといけないのか」、「なぜ、えらそうなコメンテーターや識者に『投票には行くべきだ』などとお説教されなければいけないのか」――。本書ではこうした素朴な疑問に、社会学者で政治とメディアの研究をしている東京工業大学准教授と西田亮介氏が、ソフトな語り口でわかりやすく答えてくれています。一問一答形式なので、気になる部分、興味のある部分だけ拾い読みすることもでき、難解になりがちな政治の話を、わかりやすく気軽に理解できるでしょう。
どの疑問も興味深いですが、いくつか取り出してみましょう。
「選挙のとき、白紙で出すだけでも意思表示になるという説をSNSで見たのですが」
「そもそも私たちはメディアを信じて大丈夫なんですか?」
「政治家って悪い人ばっかりのような気がして政治にもよい印象がありません。いい政治家っていないんですか?」
ちょっと答えを知りたくなるような気がしませんか?

本書の根底に流れているのは、自由民主主義の日本で“国を動かす”力があるのは、“本来は”国民一人ひとりであり、そのようにあるべきという考え方です。ですが、その力を行使するためには、相応の「コスト」を支払わなければならないとも述べられています。
著者は冒頭で、「政治は私たちの生活とかけ離れていて、勝手に何もかもが決まっている気がします」という疑問に対して、次のように述べます。「多くの人が生活のことや仕事のことなどに集中できる社会は『幸せな社会』です。でも、自由民主主義の社会であるからこそ生じるコスト負担なしで、それを維持している国は歴史的にもほとんど見当たりません」
その「コスト」こそが、政治における「不正行為や権力」の監視だったり、選挙で投票することだったりするのです。
「私たちの生活すべては政治と関わっている」。このように言われても、確かになかなか実感はできないものです。著者が言うようにそれは「幸せ」なことでしょう。ですが、例えば、学校の授業料や奨学金の問題、買い物のときに払っている消費税の税率(私の子どもの頃は3%とか5%でした。今の半分ですね)、私たちの身近なところで、生活と政治は確かに深く関わり合っています。本書を読むことで、「政治」に関心を持つこと、「よくらわからない」なりにも選挙に行くことに、ほんの少しでも「意味」が見出せるかもしれません。
プロフィール
水無月游(みなづき・ゆう)
文学系の大学学部を卒業、社会学系の大学院修士課程を修了後、教育関連の専門書出版社に編集者として勤務。副業でライター業をときどき。主な関心分野は教育、福祉、政治など。読書は雑食、本棚が容量オーバーで本がいつも床に積まれています。
WattMagazine編集部 編集長