私たちの暮らしを支える電気〜電気にかかわる人々その仕事と内容とは

私たちの暮らしを支える電気〜電気にかかわる人々その仕事と内容とは

私たちは自宅や学校、会社、工場などで、当たり前のように電気を使用しています。電気は、熱や光、動力などに変換し、身近なところでいうと、たとえば、エレベーターやエスカレーターに多くの人々を乗せて移動させるほどの大きなエネルギーを持っています。とくに会社や工場は電気の使用量が多いため、電力会社から6,600V(ボルト)の大きな電圧で電気を供給してもらい、100Vや200Vまで落とした状態で使用しています。このように、誰もが電気を安全かつ簡単に使用できるのは、配線工事や照明器具、コンセントなどの機器の接続などを、法律通りに工事する人や、工事中や工事後を管理・監督する人がいるからです。この記事では、電気にかかわる仕事について詳しく解説します。


電気にかかわるお仕事とは

みなさんは、電気にかかわる仕事と聞いてどんな職業を思い浮かべますか?発電所で電気を作る仕事、電気工事をする仕事、各家庭の電気メーターの検針をする仕事など、電気にかかわる仕事はたくさんあります。なかでも一番身近であり、電気の安全を直接守る職業が3つあります。それが、「電気工事士」「電気工事施工管理技士」「電気主任技術者」です。

電気主任技術者、電気工事士、電気工事施工管理技士の役割と仕事

電気設備は安全に長く使用できるように設置されていますが、それでも時間とともに劣化をしていきます。そのため、大きなビルや工場では不具合が起きないよう、1年に1回以上点検をして、設備が安全に使用できるように整備・管理したり、一般住宅でも4年に1回は一般送配電事業者(電力会社等)による点検を行ったりしています。

「電気工事士」国が定めた技術基準に適合するように、建設中の建物へ配線工事など、電気設備を作る工事を行います。

「電気工事施工管理技士」電気工事士が実施している工事が適切かをチェックします。

「電気主任技術者」工事完了後、建物の電気設備の維持管理をします。

それぞれの仕事についてもっと詳しく解説しましょう。

電気工事士

電気工事士は、依頼主と照明器具やスイッチ、コンセントなど設置場所の希望を打ち合わせたうえで、要望に沿って配線方法を検討し、配線や機器の位置を記載した図面(単線図といいます)を作成します。そして、その配線図に通りに配線や器具を実際に設置する工事を行います。

配線工事が完了したら、電力会社に図面をもとに通電申請(電気を送ってもらう申請)をし、電力会社の検査に合格すれば、電気が通電され、電気工事が完了。配線以外にも、故障したスイッチやコンセントの修理も電気工事士が実施します。これらの工事は、電気工事士が行える独占業務です。

電気工事施工管理技士

電気工事施工管理技士は、数ある電気工事の中で、事業用電気工作物(ビジネスビルや商業施設ビル、工場など)と呼ばれる、規模の大きな電気設備を取り扱う新築工事の場合に、事前に電気工事の施工計画を作成して電気工事業者と事前に打ち合わせを行い、工事がスムーズに進むよう機材手配などを電気工事業者に指示する指南役です。工事が開始後したら、施工計画どおりに進んでいるか、工事が技術基準通りの品質に確保されているか、作業は安全に出来ているかなど、工事の全ての管理・監督を行います。

電気主任技術者

「電気主任技術者」は、ビジネスビルや商業施設ビル、工場などの受電設備(電力会社から6,600Vの供給を受けた電気を現場で使用できる100V又は200Vの小さな電圧にする設備)を中心に日常点検、月次点検、法定点検である年次点検を実施します。電気設備の故障や機器交換時には、業者を手配し、立ち合い、技術基準に適合していることを確認するのも主な仕事です。

よって、測定器を使用して電圧や電流などの測定をしたり、電線等の取付ねじの増し締めや清掃を行い、事故を防止したりします。

電気にかかわる仕事につくには

これらの仕事に就くには、必要な資格を理解し、取得する必要があります。

電気工事士

(一財)電気技術者試験センターが実施する「国家試験」において、第一種電気工事士と、第二種電気工事士があります。

・第一種電気工事士

最大受電電力が500KW未満の自家用電気工作物(ビジネスビルや商業施設ビル、工場など)の電気工事ができる資格です。取得には、第一種電気工事試験に合格するとともに3年以上に実務経験が必要です。そのため、まずは第二種電気工事士試験に合格し、第二種電気工事士免状を取得後、3年以上の実務を積んでから第一種電気工事士に進むことになります。

・第二種電気工事士

一般用電気工作物(一般の住宅や小規模店舗等)の電気工事が行える資格です。資格試験合格のみで取得ができ、経験を積まずに電気工事士として働くことができます。


第一種および第二種電気工事士試験は、学科試験と技能試験に分かれており、学科試験に合格すると、後日、技能試験が受験できる仕組みになっています。学科試験は合格後、次の試験までは1回持ち越しが可能です。技能試験は、持参した作業用工具を使用して、配線図で与えられた問題を支給された材料で40分以内(第二種)に完成させます。出題されるのは、コンセントの組み立てやケーブルの接続など、実際の配線時に使う技術です。試験問題の配線図は13問。独学で学習する場合は、正しく配線されているか、確認してくれる人がいるといいでしょう。

電気主任技術者

電気工事士と同じく、(一財)電気技術者試験センターが実施する国家試験で、第三種、第二種、第一種と3種あり、それぞれ保安・監督できる範囲が異なります。

第三種電気主任技術者(電験三種)の場合、試験は年に2回実施され、試験科目は「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目。合格基準点は全科目60点ですが、計算が多い科目と知識が多い科目に分かれています。電験三種には科目合格制度があり、申請により最大で連続して5回まで当該科目の試験が免除され、その間に残りの3科目を合格できれば試験合格となります。

電気工事施工管理技士

(一財)建設業振興基金が実施する検定制度で1級と2級があり、試験は第一次検定と第二次検定に分かれます。第一次検定、第二次検定、各受験時に異なる受験資格が必要ですが、2級の第一次検定は条件が満17歳以上、第二次検定は1次検定合格者と、比較的受験しやすいのが特徴です。

2級一次検定に合格すると技士補の資格が取得でき、2級第二次検定に合格すると「2級電気工事施工管理技士」の国家資格が取得できます。検定科目は、「電気工学等」、「施工管理法」、「法規」の3科目で、合格基準は60%以上です。電気工事士同様、計算問題と知識問題があります。

まとめ

ご紹介した試験・検定の難易度は次の通りです。

第二種電気工事士 < 第一種電気工事士 < 2級電気工事施工管理技士 < 第三種電気主任技術者

資格取得に挑戦したい方は、学生の合格者も多く、気軽に挑戦できる第二種電気工事士から取得されることをオススメします。本記事を読んで興味を持たれましたら、まずは過去の試験問題から手に取ってみてくださいね。

プロフィール

TAC電気工事士講座 三原 政次(みはら まさじ)講師

1950年鹿児島県生まれ。東芝テクノネットワーク(株)を経て「オフィスみはら」として電気工事や家電製品についての講師業を開設。現在は大学非常勤講師、企業講師としても活躍中。

TAC電気工事士講座ホームページ

TAC電気チャンネル-YouTube

TAC電気工事士講座公式Twitter

この記事のWriter

電気工事士・電気主任技術者をはじめとした電気・設備関連の資格試験対策講座を開講。資格の学校として多くの合格者を輩出してきたノウハウをもとに、文系の方や初めて学習する方にもわかりやすい講義・教材とカリキュラムで合格に導く。電気工事士技能試験対策コースでは、完成作品を画像でメール送付する「メール添削」、Web会議システムを使用し講師が配線チェックなどをマンツーマンで指導する「オンライン添削」など、通信講座でも安心の添削サービスを提供。

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