感情を書きなぐれ!日記そっくり「筆記開示」とは?
「夏休みの絵日記」などで幼い頃から親しんできた日記に比べ、「筆記開示」という耳慣れない用語はとっつきにくいかもしれない。具体的にはどのような療法なのでしょうか。過去の研究から、筆記開示の利点や有効な活用方法をまとめた2005年のメタ分析1によると、この療法では次のルールに従って自分の気持ちを書くのだそう。
これから4日間、人生の中で最も衝撃を受けた出来事や、人生を変えてしまうほど感情的になった問題について、あなたが考えたことや気持ちを書いてください。
親、恋人、友人や親戚との関係を結びつけて書いても構いません。
毎日同じ一般的なことを書いてもいいですし、違うことについて書いても構いません。
そして、あなたの文章は絶対に公開されません。
スペルや文法、文章の構造について心配する必要はありません。
唯一のルールは、書き始めたら時間がなくなるまで書き続けることです。
つまり、「文章の出来は気にするな!とにかく思ったことを書きなぐれ」……ということ。
「感情を吐き出す」「継続して書く」という点が、日記に酷似していますね。
3日坊主+1日続ければOK!
筆記開示の効果が初めて実証されたのは1986年のこと。大学生に、「4日間連続して15分間」筆記開示をさせるという実験が行われました。たった4日間でも、実際に効果があったのです。
実験から4ヶ月後、「自分の考えや感情について深く掘り下げて書いた被験者」と「部屋の様子や靴など、表面的な事柄だけを書かせた被験者」の健康状態を比べると、前者は後者より体調不良の日数や健康センターへの訪問回数が明らかに少なくなっていました。つまり、「筆記開示を行うと健康状態が改善する」という結果が出たのです。
日記は基本的に自由に書くもの。日々の出来事を時系列順に書き出したり、食べたものや読んだ本を記録すると決める人もいるでしょう。しかし、書くことを限定するあまり、面倒になってやめた人も少なくはないはず。
一方、筆記開示は「気持ちを書く」だけで、さらにその期間はたったの4日間。「これまで日記を1週間と続けられたことがない」という人でも「三日坊主+1日」だけで効果が出ますし、「筆記開示は日記よりもカンタン」とすら言えるのでは。
実践!心も体も強くする日記の書き方
たった4日で効果が得られるコスパ最高の「筆記開示」、重要なのは、「自分が書きたいことを書きたいだけ書く」こと。
筆記開示5つのルール
・執筆は、気を散らすことなく、私的で個人的な場所で行う
・3日~4日連続で書く
・20分書き続け、自分の気持ちの整理に10分かける
・書くトピックは自分で決める
・不特定多数への公開を前提としない
(Karen A. Baikie & Kay Wilhelm,2005)
SNSの公開アカウントやブログなど、一見日記のような役割を果たしているかのようなツールには要注意。公開を前提とすれば「感情を書きなぐる」ことは難しくなるため、ロック機能のついたメモアプリや紙の日記帳を用意し、のびのびとネガティヴ感情を書きなぐろう!
まとめ
筆記開示は「とにかく4日・20分は書く」「トラウマを無理に書かない」「人に見せない」ことで身体機能や不眠、精神状態の改善が見込めるかもしれません。お気に入りのノートに万年筆で書いてもいいし、A4コピー用紙にボールペンで書き捨てても構わない。気軽に「感情書きなぐり」を試してみませんか。
参考文献
Baikie, Karen A& Kay Wilhelm. (2005) Emotional and Physical Health Benefits of Expressive Writing. Advances in Psychiatric Treatment 11, 338-346. ↩︎
元記事「たった4日間日記を書きなぐるだけで心身ともに健康に&仕事効率もアップするらしい。」は2018年10月10日にBUSINESS LIFEに掲載されたものです。
たった4日間日記を書きなぐるだけで心身ともに健康に&仕事効率もアップするらしい。 | ビジネスライフ(BUSINESS LIFE)
https://business-life.jp/mental/12701「日記は心の整理に役立つ」ということはなんとなく知っていても、感情のままに書きなぐるのは少し気恥ずかしい。後で読み返すことを考えて事務的な記録にとどめている人も多いだろう。 しかし、「日記を書きなぐる」という行為には精神・肉体ともに健康効果があることをご存知だろうか? 実際の医療現場で試みられている心理療法の一つ「筆記開示」は、不眠症や免疫機能の改善、記憶力の向上、さらには欠勤の減少など様々な効果