わたしたちはなぜ本を読むのか〜10代のうちに読んでおきたい本 1冊目

わたしたちはなぜ本を読むのか〜10代のうちに読んでおきたい本 1冊目

「もっと本を読みなさい」 多くの方が、学校で先生から、あるいは自宅で両親から、こんなことを言われたことがあるのではないでしょうか。しかしその時、具体的にどんな本を読めばいいのか、本の読み方を教えてもらえたでしょうか。今回ご紹介する一冊目は、「何をどう読めばいいのか分からない」「読んでも分かった感じがしなくてモヤモヤする」と、選書に悩んでいる人に読んでいただきたい本です。


1冊目 本を読む本

『本を読む本』(モーティマー・J・アドラー,チャールズ・V・ドーレン,外山 滋比古,槇 未知子):講談社学術文庫 製品詳細 講談社BOOK倶楽部

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000150900

本書は、1940年米国で刊行されて以来、世界各国で翻訳され読みつがれてきた。読むに値する良書とは何か、読書の本来の意味とは何かを考え、知的かつ実際的な読書の技術をわかりやすく解説している。初級読書に始まり、点検読書や分析読書をへて、最終レベルにいたるまでの具体的な方法を示し、読者を積極的な読書へと導く。単なる読書技術にとどまることなく、自らを高めるための最高の手引書。

本を読む本

モーティマー・J・アドラー、チャールズ・V・ドーレン 著

外山滋比古、槇未知子 訳

講談社学術文庫

この本はタイトルの通り、本を読んで理解するための技術を分かりやすく解説したもので、1940年にアメリカで刊行されて以来、80年以上読みつがれてきた古典と言える作品です。この本の中では、読書のレベルが初級読書、点検読書、分析読書、シントピカル読書の4種類に分けられています。


初級読書は、単語を覚えたり平易な文を理解したりする技術で、点検読書は、「この本は読む価値のあるものか」を見極めるときの、拾い読みや下読みのことです。タイトルや目次、索引、序文などを見て、議論の中心になりそうな章をいくつか読んでみると良いでしょう。そこから分析読書で、点検読書で価値があるとされた本を読みます。その際に、分類と全体の構造の把握が行われ、その後、著者が使う言葉=キーワードの吟味と批評が行われます。

ここまで辿り着くと、「何についての本か」「全体として真実か、あるいはどの部分が真実か」「どんな意義があるか」といった疑問に答えられるようになっているはずです。そして、最後に最も高度な「シントピカル読書」。シントピカル読書は、同じテーマについて2冊以上の本を読むことであり、この本では読書の最終目標とされています。 これらを実践することで、単純に本を読むための技術にとどまらず、「なぜ本を読んだ方がいいのか」「本を読む意味」を知る手掛かりにもなるでしょう。

最後に、「なぜ本を読むのか(読んだ方がいいのか)」という問いについて、私なりの答えを、教育哲学者の苫野一徳さん(熊本大学准教授)の言葉の引用で示したいと思います。

「読書は僕たちをGoogle マップにする」

読書をすることで私たちは、Google マップを眺め、動かすように世界中を駆け巡り、さまざまなことを知ることができるのです。さあ、『本を読む本』で「良い」読書の準備をしてみてください。

プロフィール

水無月游(みなづき・ゆう)

文学系の大学学部を卒業、社会学系の大学院修士課程を修了後、教育関連の専門書出版社に編集者として勤務。副業でライター業をときどき。主な関心分野は教育、福祉、政治など。読書は雑食、本棚が容量オーバーで本がいつも床に積まれています。

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文学系の大学学部を卒業、社会学系の大学院修士課程を修了後、教育関連の専門書出版社に編集者として勤務。
副業でライター業をときどき。主な関心分野は教育、福祉、政治など。読書は雑食、本棚が容量オーバーで本がいつも床に積まれています。

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