間違った思い込み①体重を落とすには、 炭水化物抜きダイエット
炭水化物抜きダイエットがブームになり、このダイエット法で痩せた人が続出しました。確かに炭水化物はとりすぎると太りやすくなりますが、人間の身体に必要不可欠な役割を担っています。
ここで、炭水化物ダイエットの中から、「ケトン体ダイエット」を取り上げてみましょう。これは、食事から炭水化物を徹底的に排除して血中から糖をなくし、体内の脂肪が分解されてできたケトン体で活動する体質をつくるというもの。つまり、炭水化物の代わりに、ケトン体の材料となる良質の油や肉を摂取することを推奨するものです。
この方法は身体によいとは言えず、長く続けると心臓や腎臓に負担がかかるダイエット法です。

詳しい理由を見ていきましょう。世の中にカロリーのあるものは、3つしかありません。炭水化物、タンパク質、脂質です。それ以外のビタミンやミネラルは、カロリーがなく、身体を作る栄養素、機能させる栄養素というだけで、動かすためのエネルギーにはならないのです。ですから、炭水化物、タンパク質、脂質、この3つの栄養を、どんなバランスでどんな食べ物からとるかということを、考えていく必要があります。
ケトン体ダイエットでは、このうち脂質とタンパク質のみに絞って摂取するものですが、それは胃腸や心臓、腎臓に大きな負担をかけます。たとえば、揚げ物や焼肉を食べた日の翌日は、胃がもたれますね。食べ物にはそれぞれ一定のカロリーがあり、カロリーが高いとそれだけ消化に負担がかかるということなんです。油のカロリーは、1グラムあたり9キロカロリーに対して、炭水化物は1グラム4キロカロリーです。消化にかかる負担の差は、一目瞭然でしょう。
とはいえ、カロリーが低いものをたくさん食べさえすればよいということではありません。炭水化物が一番胃腸に負担をかけず、カロリーとして消化吸収されますが、炭水化物のほかに、タンパク質も脂質も、カロリーがある栄養素として大事なので、バランスよくとらなくてはいけません。理想の比率は炭水化物 50~60%:タンパク質15~20%:脂質20~25%です。つまり、バランスよく食べるとカロリーの半分以上が炭水化物ということです。

炭水化物は消化吸収によってブドウ糖などに分解され、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。そして一部は血液中に血糖として入ります。血糖値は、食後約30分後にピークに達するのですが、それは食べた炭水化物が徐々に消化されてブドウ糖になり、血液中に放出されるからです。
私たちの身体は、正常であれば血糖値を常に一定を保とうとする力が働きます。そのため、血糖値が高くなればそれを下げるためのホルモンであるインスリンが分泌されます。インスリンが分泌されると、身体は血液中のブドウ糖を減らすために(血糖値を下げるために)中性脂肪として蓄えようとします。それはつまり、食べたものがどんどん脂肪になってしまうということ。だから炭水化物の過剰摂取は太りやすくなるということです。

しかし、ブドウ糖は、脳や中枢神経系の唯一のエネルギー源。脳は1分間に約 100mgのブドウ糖を消費しています。ただボーッとしているだけでも、脳はブドウ糖を消費しているのです。ましてや仕事で頭をフル回転させるとなると、当然ブドウ糖をたくさん必要とします。脳にとってブドウ糖がどれだけ重要な働きをしているか、おわかりいただけたでしょうか。
炭水化物は、どんな人にも必須の栄養素であり、「太るから」と言って炭水化物を極端に抜くダイエットは望ましくありません。
間違った思い込み②食物繊維は身体に必要ない
健康な身体を保つには、炭水化物をしっかりとりつつ、食物繊維を含む食品を炭水化物と一緒に食べるようにしましょう。
食物繊維は、ブドウ糖の吸収を抑えるので血糖値が上がりにくくなります。血糖値の上昇がゆるやかなのでインスリンの出もゆるやかなため、身体はブドウ糖を脂肪として蓄えにくくなります。また、腸の動きを活発にするので便秘にもなりにくく、そういった意味でもダイエッ トに効果的。何より腸の環境を良好に保つことができます。腸年齢は実年齢、と言われているように、腸が元気なら身体も元気だということが言えます。

もちろんダイエットに関係なく、食物繊維は積極的にとったほうが良い栄養素です。食物繊維は主に野菜に含まれます。シャキシャキした野菜や海藻などを積極的に食事に取り入れましょう。キャベツをザクザク切って塩昆布を散らして食べたり、大根、セロリ、にんじん、きゅうりなどをスティック野菜として味噌とマヨネーズを混ぜたものにつけて食べると多めにとることができます。一人暮らしの男性は、特に食物繊維が不足しがちなので、手軽にとれる自分好みの食べ方を見つけましょう。
野菜は、意識的にたくさん食べている人以外はほとんどの人が不足しています。私は野菜が大好きで、サラダを多く食べているつもりですが、それでも毎日必要量を満たしている訳ではありません。一日あたり両手にたっぷり一盛りの野菜を食べることを目標に、ぜひ負担のないかたちで実践していただけたらと思います。同時にビタミン群もとれて、身体の調子も良くなっていくでしょう。
元記事「知らなきゃ損する、糖質制限の真実。『炭水化物はいらない栄養素』のウソ」は2017年11月28日にBUSINESS LIFEに掲載されたものです。

知らなきゃ損する、糖質制限の真実。「炭水化物はいらない栄養素」のウソ | ビジネスライフ(BUSINESS LIFE)
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大学で心理学・精神医学を学び、その知識を深めるためアメリカに留学。帰国後、ヨガ・瞑想インストラクター、ダイエットジムReborn myself六本木本店店長・スーパーバイザー等を経て、2017年、日本初の疲労回復専用ジムZERO GYMのプログラムディレクターに就任。またダイエット指導経験から、独自の食欲鎮静メソッド「食事瞑想」を確立、ミスワールド日本代表の審査員やボディメイクも手掛ける。2019年3月、NHK WORLD JAPAN「Medical Frontiers」に出演し、世界160の国と地域にヨガと食事瞑想を伝授。著書に『エグゼクティブ・コンディショニング』等がある。